いよいよ間近に迫ってきた、2020年の東京五輪。飲食業界にとっては、好景気による外食ニーズの高まりや訪日旅行者の急増による売上拡大の大きなチャンスです。

一方で、飲食業界を取り巻く環境は五輪終了後の2021年までに激変している可能性があります。

そこで、本コラムでは、2021年までに飲食業界を取り巻く環境がどのように変化すると予想されるのかを考えていきます。そのうえで、そのような変化に備えて今から取り組むべきことを解説していきます。

2021年までに生じる、飲食業界を取り巻く環境の変化

まずは、2021年までに生じる飲食業界を取り巻く環境の変化を確認していきましょう。

消費税増税と軽減税率制度の導入

2012年、当時の政権は5%だった消費税率を、2014年に8%、2015年に10%に引き上げる法案を提出し、国会で可決成立しました。そして、実際に2014年には8%に引き上げられたものの、経済情勢などの影響から10%への引き上げが先送りされ、2018年時点でも8%が維持されています。しかし、2019年、ついに10%に引き上げられる公算が高くなりました。

そして、飲食業界関係者が消費税増税とともに注目しているのが軽減税率の導入です。

軽減税率とは、消費税増税後も特定品目の税率を8%に据え置く制度です。そして、特定品目に「飲食料品」が含まれていることから、飲食業界の注目を集めているのです。とはいえ、すべての飲食料品が特定品目に含まれるわけではありません。酒類のほか、いわゆる外食は軽減税率の対象にはなりません。ただし、テイクアウトやデリバリーした商品は軽減税率の対象になります。

そのため、増税後は税負担の少ないテイクアウトやデリバリーを希望する消費者が増加することが予想されます。

東京五輪の開催による訪日旅行者の増加

2012年以降、訪日旅行者数は増え続けています。日本政府観光局の統計(※1)によると、2012年に日本を訪れた外国人の総数は約830万人でしたが、5年後の2017年には3倍以上の約2,860万人に達しています。

背景には、円安やアジア圏諸国の所得増加といった要因のほか、やはり東京五輪の開催決定を契機に日本を訪れようとする人が増えているということがあるでしょう。そして、訪日旅行者の数がピークに達するのが、2020年の東京五輪の開催時と予想されます。

※1  出典:日本政府観光局 「訪日外客数の動向」

キャッシュレス決済のさらなる普及

この数年で、コンビニやスーパーでは現金のほか、クレジットカードや電子マネー、ポイントカードなどさまざまな方法で決済できることが当たり前になりました。とはいえ、経済産業省の資料(※2)を見ると、2015年において、日本のキャッシュレス決済比率はわずか18.4%であり、89.1%を占める韓国や60.0%を占める中国と比べて低水準です。

こうした状況を受けて、政府はキャッシュレス化への対応を急いでおり、経済産業省は東京五輪に向けたキャッシュレス化推進の方針を明確に打ち出しています。今後、日本においてもキャッシュレス決済の比率が高まっていくことでしょう。

※2 出典:経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」

五輪以降の景気後退「2021年問題」

「五輪開催後、国内の景気が後退する」

このような予測を示している識者が少なくありません。

実際、IMFの発表している各国経済成長率のデータにもとづくと、1988年のソウル大会から2008年の北京大会の6大会について、実に5つの開催国で五輪開催後に経済成長率が低下したというデータもあります。さらに遡ると、1964年に開催された前回の東京五輪においても、翌1965年には「証券恐慌(昭和40年不況)」に陥っています。

五輪の終了に伴って訪日旅行者の増加が鈍化するなかで、景気後退による外食離れが発生し、飲食業界を取り巻く環境は厳しいものになってしまう可能性も否めません。

では、このような変化に備えて、飲食店はどのようなことに取り組む必要があるのでしょうか?

2021年を見据え、今から飲食店ができる4つのこと

テイクアウト・デリバリーの強化

軽減税率の導入後、店外での飲食のニーズが高まることを見越して、テイクアウト・デリバリーへの対応を進めておく必要があります。また、既にテイクアウト・デリバリーに対応している店舗でも、メニューの拡充や料金設定の見直しを検討する必要があるでしょう。

加えて、オーダー・会計をスムーズに完了できる仕組みも必要になります。たとえば、後述するキャッシュレス決済を導入すれば、預かり金や釣銭の確認が不要になるので、よりスピーディーに会計を完了し、レジ待ちの時間を短縮できるでしょう。そのほかにも、オーダー・会計を済ませた来店客には音や振動で商品完成を知らせる呼び出しベルを渡しておけば、商品受け渡しをスムーズに行えるようになります。

訪日旅行者の取り込み

訪日旅行者が急増している今、売上を拡大するには彼らを取り込むための店舗運営や商品開発が欠かせません。外国語を扱うことのできるスタッフの確保はもちろん、ウェブサイトの多言語展開や外国人に好まれるメニュー展開が必要です。

訪日旅行者の取り込みについては、官民一体の取り組みも進められています。たとえば、広島県では、外国人が入国時にICカードに登録した個人情報(母国語やアレルギー情報等)にあわせて店舗でサービスを提供するという「おもてなしサービス」の実証実験が行われました。

キャッシュレス決済への対応

韓国や中国など、キャッシュレス決済比率の高い国々から日本を訪れる外国人にとって、キャッシュレス決済の可否はお店選びの重要な要素です。そのため、訪日旅行者の取り込みにはキャッシュレス決済への対応が最重要事項です。実際に、観光庁が行った調査(※3)でも訪日旅行者が日本に抱えた不満の1つに「クレジットカード(が使えないこと)」に対する不便さが挙げられています。

現金だけではなく、クレジットカードや電子マネー、仮想通貨、QRコードなど、幅広い決済手段に対応することが必要です。

※3 出典:観光庁「外国人旅行者に対するアンケート調査結果について」

業務効率化・自動化の検討

前述の通り、東京五輪開催後の2021年以降は、景気後退が予想されます。そのため、売上が減少しても、コストを圧縮することで利益を生み出すことのできる体制を整えておく必要があります。

具体的には、セルフオーダーシステムやキャッシュレス決済の導入によって、これまで人手に頼っていた業務を効率化・自動化していくことです。また、こうした取り組みはコスト削減だけでなく、お客様の待ち時間削減などによって顧客満足度の向上につながります。

常に最新の情報を得ることが、3年後につながる

2021年に向けて生じるさまざまな変化に対応するため、飲食店に求められるのは常に最新の情報を収集して、それが店舗に導入可能か否かという検討を繰り返していくことです。

前述した「少ない人数でも店舗を運営できる仕組み作り」の正解は、1つではありません。例えば、お客様のスマートフォンから注文・決済ができるシステムやクレジットカードの不正利用を防止するシステムなど、最新のIT技術を利用した解決手段もあります。こうした技術に関する知識を吸収しておけば、店舗に導入する際にも時間をかけずに取り入れることが可能になります。

こうした飲食業界の最新情報を詳細にまとめたホワイトペーパーもご用意していますので、3年後に向けた飲食店運営のヒントをお探しの方は、こちらも併せてご活用ください。