世界中でEC市場が拡大しています。なかでも中国のEC市場は活況で、今後さらにその規模は成長すると見られています。ECサイト運営者の中にも、成長する中国の巨大市場を狙った「越境EC」を考えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

一方、越境ECを始めるにあたっては言語だけでなく、決済方法や法律、文化の違いなど、様々なことに注意を向ける必要があります。

そこで本コラムでは、中国向けの越境ECを成功させるためのポイントを、4つに分けて解説します。

拡大する越境ECの市場規模

経済産業省の調査(※)によれば、2017年の世界の越境ECの市場規模は5,300億ドルで対前年比成長率が約32.5%。以降も成長する見込みで、2020年には約1兆ドルの規模まで達すると予測されています。

このように拡大する越境ECの市場規模の中でも、特に注目されているのが中国です。同調査で公表されている、日本・アメリカ・中国の3ヵ国間の越境EC市場規模を見ると、2017年の中国の消費額は約2兆7556億円。これは、日本の10倍、アメリカの2倍以上の数字となっています。

今後もさらに中国ECの消費規模は増加すると見られており、ECサイトの売上拡大を目指すためには見逃せない市場と言えます。

そこで、次項では、中国に向けたECサイト運営において、注意しなければならない点や身につけておきたい知識について、具体的に紹介していきます。

(※)経済産業省 「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る
基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」
http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180425001/20180425001-1.pdf

中国向け越境ECを成功させるための4つのポイント

ポイント1 法律違反のリスクを避ける

急激な経済成長期を迎えている中国においては、それに対応して新しい法律が短期間で成立することも珍しくありません。例えば、2019年1月より施行されている「中華人民共和国電子商務法」も、そのひとつ。中国のEC利用者を保護することを目的として作られた、ECに関すること全般について定めた法律です。

この法律では「『電子商務経営者』が越境ECを行う際は、輸出入監督管理などの関連法律・法規を順守する義務を負う」と定めています。これにより、越境ECを行う事業者は一般貿易と同様の申請や、認証の取得が義務付けられました。

そのため、従来は問題なく販売できていた商品であっても、今後は認証などを取得しなければ通関できなくなるなど、越境ECへの影響が指摘されています。そして、違反してしまった場合には当然、罰則規定も定められています。

このような新しい法律への対応不足によって違反を犯さないためにも、中国の法律事情について常にアンテナを張っておくことが重要です。

ポイント2 中国で浸透している「QRコード決済」を導入する

2018年末、PayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」で話題となったQRコード決済。しかし、日本においてはQRコード決済の普及はようやく始まったばかりです。

一方、国ではAlipayやWeChatPayなどのQRコード決済が浸透しており、すでに店舗だけでなくECサイトでも広く利用されています。

中国ECでQRコード決済が好まれている理由としては、AlipayやWeChatPayがエスクロー(仮払い)方式を採用していることが挙げられます。この方式では、代金は購入者が商品を受け取るまで決済事業者の元にプールされ、商品に問題がなかった場合のみ、EC事業者に支払われる仕組みとなっています。

中国では偽物や不良品を販売しているECサイトも少なくありません。そのため、利用者が安心して買い物ができるQRコード決済が、ECにおいても支持を集めています。

特に越境ECにおいては、EC事業者に関する情報が少ないことなどから、利用者の心理的なハードルは高くなりがちです。安心して商品を購入してもらうためにも、QRコード決済への対応は必須と言えるでしょう。

ポイント3 「売れどき」に合わせてセールやキャンペーンを開催する

日本では6〜7月と12月のボーナス時期や、年始にセールやキャンペーンを開催しているECサイトが多いです。「売れどき」に合わせて施策を展開するのは販売業の基本と言えますが、中国ではその時期が日本とは異なります。

中国で一番の「売れどき」と言えば、春節(旧正月)。旧暦のため日付は毎年変わりますが、おおよそ1月下旬〜2月中旬。例えば2019年は2月5日が春節です。日本の「初売り」と同様、中国でも大々的にセールが行われており、利用者の財布の紐も緩みやすいようです。

また、独身の日(光棍節=11月11日)も押さえておきましょう。もともとは名前の通り、独身者が集うパーティや婚活イベントが行われていましたが、ここに大手ECモール「Tmall(天猫)」を運営するアリババ社が目をつけ、セールを開催したところから火がついて、今では年最大のセールイベントとなっています。

このセールは1日限定にも関わらず、2018年にはTmall単体で3兆円の売上規模に。越境ECとして、ユニクロが売上トップ企業第4位にランクインしたことも話題となりました。

こうした波にうまく乗ることができれば、ECの売上を爆発的に伸ばすこともできるでしょう。

ポイント4 人気のECモールへの出店やSNSを利用して集客する

日本企業が中国に向けた越境ECのサイトを運営する場合、ライセンス取得の関係から、中国のサーバーを利用することは難しい状況です。また、日本のサーバーにサイトを構築したとしても、中国ではGoogleが利用できないため一般的なSEO対策では効果がなく、検索流入が見込めません。

そのため、中国への越境ECはECモールへの出店が基本です。中国国内では、前述したアリババ社の運営するTmallと「JD.com(京東商城)」の市場規模が圧倒的で、いわば二強体制となっています。そのため、いずれかのECモールに出店することでサイトへの集客が期待できるでしょう。

また、SNSの活用した集客も効果的です。中国では、FacebookやTwitterなどの国外SNSが制限されている一方、「Weibo」や「WeChat」といったSNSが人気。中国がメインとはいえ、Weiboは7億人、WeChatは10億人以上というユーザー数を抱えており、うまく集客できれば売上の大幅な改善が狙えます。

13億人の巨大市場を取り込むために、常に情報をアップデート

ここまで、中国向け越境ECを成功させるための基本的なポイントを紹介してきました。しかし、中国はGDP上位の国々のなかでも、言語や文化、法制度や政治体制など、様々な面で独特な国であることを忘れてはいけません。

経済状況や政治判断などにより、今は問題のないやり方でも、来年には通用しなくなっている可能性もあります。しかし、そうしたリスクを踏まえても、13億人という人口が支える中国市場はやはり魅力のあるものです。

リスクを避けつつ中国向け越境ECを成功させるためには、今回紹介したポイントを押さえることはもちろん、今後の法改正など常に最新の情報をキャッチできるような体制を作ることが重要です。