近年、キャッシュレス決済が世界中で急速に普及しています。日本においても2018年以降、QRコードやバーコードを採用したキャッシュレス決済を導入する店舗が増えつつあります。

一方、このところ海外では新たなキャッシュレス決済として顔認証決済が普及し始めています。そこで、本コラムではキャッシュレス決済の最新事情として顔認証決済について解説します

タッチ決済、QRコード決済から顔認証決済へ

2019年現在、日本におけるキャッシュレス決済の仕組みとしては、クレジットカードや交通系ICカードで採用されているタッチ決済や、PayPayやLINE Payなどで採用されているQRコード決済などがあります。

特にQRコード決済は各決済事業者が大々的なキャンペーンを実施したことで大きく利用者が増加しました。日本能率協会総合研究所の調査(※1)によると、2023年にはQRコード市場は8兆円規模に成長すると推計されており、今後ますます普及することが予想されています。現金に対する信頼が厚く、キャッシュレス後進国と表されることもある日本ですが、そのような状況から徐々に脱しつつあると言えるでしょう。

その一方で、世界のキャッシュレス決済はさらに進化を続けています。特に隣国の中国では、すでに決済時にスマートフォンすら必要としない顔認証決済が実用化され、定着し始めています。

※1: 日本能率協会総合研究所「国内のQRコード決済市場調査」

中国では顔認証決済デバイスの導入が進む

中国において顔認証決済の実用化を牽引しているのは、中国国内ネット通販最大手のアリババグループです。

同グループでは決済サービス「アリペイ」の開発において顔認証技術を研究しており、2017年には同グループ出資の大型スーパーなどで導入していました。しかし、当時の顔認証デバイスは高額かつ大型であったため、小規模なコンビニエンスストアやスーパーにとってはコストが高く導入拡大には至りませんでした。

そこで、同グループは研究をさらに加速させて2018年末に新型の顔認証決済デバイス「蜻蜓(トンボ)」をリリース。中国国内の小売店舗を対象に販売を開始しました。この「蜻蜓」は、デバイス内に搭載されたカメラがユーザーの顔を認識し、アリペイ上のアカウントと紐付けることで決済を行うというものです。

「蜻蜓」の最大の特徴は、本体サイズが従来デバイスの10分の1程度まで小型化されていること。そして、コストも従来に比べて約80%削減されていることです。これにより、店舗導入時のハードルも大きく引き下げられ、小規模店舗を含む様々な店舗において導入が拡大する可能性があります

「蜻蜓」の登場を受け、
中国国内では「2019年は顔認証決済の普及元年になる」
という声も挙がっており、今後ますます顔認証決済が浸透すると予測されます。

顔認証決済のメリットとは?

では、顔認証決済には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?

顔認証決済を導入した場合、クレジットカードや現金だけではなく、利用者が認証のためにスマートフォンやタブレットなどのデバイスを用意する必要がありません。そのため、ユーザー側の利便性向上はもちろん、店舗側でもレジ対応や会計作業などを省力化することができ、生産性向上や人手不足解消にもつながる可能性があります。

また、顔認証決済はパスワードを必要としないため「パスワードを忘れてしまったので決済できない」という状況に陥ってしまう可能性がありません。さらに、パスワード情報の流出による犯罪被害の未然防止といった効果もあります。

一方、顔認証決済についての懸念として「セキュリティ面」を指摘する声も少なくありません。ユーザーの顔画像情報を持つ第三者により、不正認証されてしまうのではないかというものです。

しかし、最近では認証時に「目を閉じて」「視線を右に」といった指示を出すことで「顔画像によるなりすまし」を防止するなど、不正利用を防止する様々な技術を搭載するシステムが実用化されつつあります。

国内でも顔認証の実証実験が進む

冒頭でも述べた通り、日本ではまだ顔認証決済は普及していません。しかし、その技術は着実に高まりを見せており、実用化に向けた実証実験が様々な企業で実施されています。

たとえばNECは2019年3月、自社の顔認証AIエンジン「NeoFace」を用いてクレジットカードと連動した顔認証決済サービスの実証実験を実施しました。

この取り組みは、同社の福利厚生施設内の飲食店に顔認証決済を導入して会計の際にレジに設置したカメラで顔を撮影し決済を行うというものです。

そのほかにも、ファミリーマートとパナソニックは共同で、2019年4月に顔認証で入店・決済ができる実験店舗をオープン。この取り組みを通して、顔認証決済の実店舗への展開が可能か検証を進めています

このように日本における顔認証決済は、中国ほどの普及はみせていないものの、その開発は着々と進んでいます。そのため、このまま技術的な進歩が続けば、「QRコード決済」のような広がりを見せることも十分に考えられます。