2018年1月、DNP(大日本印刷株式会社)より、FeliCaを搭載した非接触IC媒体「Smart-Jacket」の新製品が発表されました。従来品より小型、薄型化したこの新製品は、フレキシブルな商品展開に期待されています。発売に先駆けては、Y4.com社のヘルスケアウェアラブル端末である「GoBe2」のEdyバンドへの採用が決定。ここでは、今後ウェアラブル端末や電子マネー決済などへの利用が期待されるSmart-Jacketについてご紹介します。
そもそも「Smart-Jacket」とは?
Smart-Jacketとは、DNPが2010年から提供してきた非接触型のIC媒体です。国内標準となっている通信規格「FeliCa」に対応しているため、このICを搭載する事で近距離での無線通信が可能となります。従来品と比較すると大幅に小型、薄型である事が特徴。ICカードの会員証やポイントカード、ウェアラブル端末によくある腕時計型。その他ストラップ・キーホルダー型やフィギュア型などさまざまな形状の携帯端末に搭載でき、デザイン性を損なうこともありません。昨今はウェラブル端末のニーズが増加しており、小型ゆえ搭載先を選ばず、FeliCa機能でさらに広範な端末や用途への活用が期待されています。
従来のSmart-jacketと何が違う?
とにかく小型
薄型かつ小型のICチップのため、既にさまざまな製品形態に対応しています。1月に発売された新型は、FeliCa小型アンテナモジュールが内蔵されてサイズが縦29mm、幅20mm。厚みは基盤のみ0.7mmでIC実装部品込は1.2mm以下。従来品の縦38mm、幅32mm、厚さ4mmと比較すると厚みは1/3以下、縦横サイズも大幅に小型化しています。
薄型化に伴い一定の柔軟性を確保したため、耐久性向上と共にゴム素材等を用いたウェアラブル端末への実装も容易になりました。また、チップ規格は従来のFeliCa4KB(RC-S962)、容量メモリ4,096バイト、ユーザーメモリ2,464バイトから、FeliCa 6KB(RC-SA00)になり、ユーザーメモリ容量249ブロック(1ブロックは16バイト)にスペックアップしています。
何に使える?
新型のSmart-Jacketは発売に先駆けて楽天Edyの決済用ウェアラブル端末であるEdyバンドの他、ウェラブル端末のなかでも注目度の高いヘルスケア向けのGoBe2にも採用が決まっています。GoBe2は、リストバンド型のウェアラブル端末で、手首に装着するだけで、摂取カロリーと消費カロリーの両方を測定が可能。記録したデータはSmart-Jacketを通してペアリングした端末に送信できます。その他にも、メンバーカードやセキュリティー用の個人認証カードの発行、電子マネー決済システム、ポイントカードなど、従来の用途としても活用が出来る他、目的や企業に合わせた形状、商品デザインに無理なく搭載できます。
製品化するなら?アイデア例
小型、薄型であり、搭載対象の形状を問わないため、アイデア次第でどのような用途にも搭載し、IoT化を進める事ができます。
飲食系
ボクシーズ株式会社が運営する「putmenu」では、テーブルに置いた薄型の「PaperBeacon」の電波をスマホで読み込む事で位置認識を行い、スマホのアプリを通じて食事のオーダーを行えます。また、スタジアムの座席情報をベースに飲食物やグッズを居ながらにしてオーダーしたり、出席確認をしたりオペレーションの自動化に役立つでしょう。PaperBeacon自体は厚さ1.5mmでサイズは数cmレベルからmまで展開。厚さが課題とならなければ、さまざまな活用に期待できそうです。
運動系
出典:https://track.orphe.shoes/ja/
スタートアップ企業「no new folk studio」が発表した、IoTシューズのプラットフォーム「ORPHE TRACK」。既存の靴に小型AI「ORPHE CORE」を搭載したスマートシューズが、足の動きをもとにデータを収集、学習したうえで利用者にアドバイスしてくれます。
詳しいシステムは、靴に加速度センサー、気圧センサーと小型のプロセッサを搭載し、運動時のフォーム、ペースなどの走りや歩きのデータを採取。これらのデータをもとにアスリートへの正確なコーチングに期待できます。
その他ウェアラブル系にも
Sonyは、腕時計のバンド部分のみにSmart機能を搭載した「wena wrist」を発表。既存の腕時計のバンド部分を交換するだけでSmart化が可能です。多機能なスマートウォッチではなく、決済機能、通知機能、活動ログ採取のみに特化するなど、シンプルに用いる事のできるシステムとして用途を限定し、外部端末との連携で最適な商品開発をしました。
これらの内容はあくまでもアイデアのひとつであり、現在も多くの企業がウェアラブル端末などへの搭載を進めています。小型化によって商品の携帯化も進み、今後ますます形状を問わない製品開発ができるでしょう。
今後も注目したい
FeliCaを搭載するSmart-Jacketを用いる事で、さまざまなアイテムのスマート化への可能性が開けます。IDと連携した決済や個人認証の他にも、センサー類を組み合わせた情報収集、外部端末と連携した行動分析など、用途はさらに広がりを見せています。企業のアイデア次第では新たな集客ツール、顧客の行動分析など、オフラインの行動を「見える化」することにもつながるでしょう。得られたデータから新たな価値やサービスの創出にも威力を発揮しそうです。
FeliCa / NFC について
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